振込口座の支店コードを1桁間違え、月末に心拍数が上がった話

給与振込、まさかの誤り

月末の金曜日、時計の針が16時を指そうとしていました。経理担当の自分にとって、この時間は給与振込を終えてようやく一息つける時間でした。総合振込のデータは、締め切りの15時に送信済みでした。あとは処理が終わるのを待つだけだと思っていました。ほんの数分前までは、です。

送信済みデータの控えをファイリングするため。何気なく画面をスクロールしていました。その時、視界の端にある数字の並びが、脳に微かな違和感として引っかかりました。ある従業員の振込先支店コード。3桁のはずの数字が、どうも見慣れません。データベースに保管してあるマスターデータと照合します。指先が冷たくなっていくのを感じました。心臓が大きく一度、ドクンと鳴ります。間違いありません。1桁、違います。

まず、送信ボタンを押した直後までは安心していましたが。間違いに気づいた瞬間に血の気が引きました。モニターの数字がにじんで見えて、手のひらに汗が出る状態でした。「見間違いであってほしい」と思って3回見直しましたが、やはり1桁違っていました。

たった1桁、給与振込の悪夢

本来「123」であるべきコードが「124」と入力されていたのです。たった1桁の違いですが、給与振込では影響がとても大きいです。全従業員の生活がかかった給与が、別の口座に振り込まれる可能性があります。存在しない支店コードなら振込自体が止まり、当日の着金が遅れる可能性もあります。どちらに転んでも、月曜の朝には大問題になる状態でした。時計はすでに16時を回っていました。銀行の当日振込受付時間は過ぎています。もう後戻りはできませんでした。キーボードを握る手が、小刻みに震えていました。

Excelの振込データ一覧で支店コード欄が赤くハイライトされている画面

この瞬間から、週末の予定は頭から消えました。膨大なExcelの行の中で。たった1セルの数字ミスがここまで重いとは思っていませんでした。数字を見慣れているつもりでも、焦ると本当に見えなくなると痛感しました。

目視確認の落とし穴

次に、なぜ、こんな単純なミスを見抜けなかったのでしょうか。自分を責める気持ちのまま、なぜこうなったかを頭の中でぐるぐる考えていました。支店コードは、たった3桁の数字の羅列です。金融機関コードの4桁と合わせ、口座番号の前に並びます。しかし、この数字自体に意味はありません。少なくとも、人間がパッと見て意味を理解できるようなものではありません。「123」が「〇〇支店」で、「124」が「△△支店」だなどと。即座に判別できる人間はいないでしょう。

自分たちがやっていたダブルチェック、トリプルチェックは。結局のところ元データと入力データを目で見比べる作業でした。実際にやってみると、思い込みで見落とすことがありました。「123」と「124」のような似た文字列は、同じに見えてしまう瞬間があります。何十件も処理していると集中力が落ちて。ミスを見つけにくくなるのも現場ではよくありました。

自分の部署では。目視チェックだけで100件の振込データを見た月に1〜2件の軽微な入力ミスが見つかることがありました。率にすると約1〜2%です。大きい数字ではありませんが、給与振込では無視できない水準でした。

認知の罠と入力ミス、ヒューマンエラーの要因

一方で、この「認知の罠」が、支店コードの1桁違いを見逃しやすくしていました。従業員名の漢字違いなら違和感を持ちやすいですが。数字だけの列は違和感の手がかりが少ないです。数字の羅列を目で追っていても、どこが違うのか分からなくなる瞬間がありました。

さらに、テンキーからの入力ミスという物理的な要因も無視できません。隣り合ったキーを叩いてしまうことがあります。疲労で指がもつれてしまうこともありました。こうした単純なミスでも、給与振込では大きなトラブルにつながります。今回は送信後に気づけましたが、気づかないまま翌月を迎えていたらと思うと。背筋が凍りました。ヒューマンエラーは、個人の能力や注意力だけで片付けられないと感じました。作業の流れそのものに、見落としやすいポイントが残っていたのだと思います。

給与振込ミス、最悪のシナリオ

震える手で受話器を取り、法人取引のある銀行のサポートデスクに電話をかけました。時刻は16時半。当然、通常の窓口業務は終了しています。自動音声の案内に従い、いくつかの番号をプッシュして。ようやく担当者に繋がりました。自分の声が上ずっているのが分かりました。

そのため、状況を説明します。総合振込で、一件だけ支店コードを誤って入力したままデータを送信してしまったこと。組戻しは可能なのか、あるいはデータの修正はできないのか。矢継ぎ早に質問する自分に対し、電話口の向こうの担当者の声は。あくまで冷静で事務的でした。

「左様でございますか。まず、送信済みのデータは、私どもで修正することはできません」

最初の回答で、希望の半分が打ち砕かれました。続けて、最も知りたかったことを尋ねます。この振込はどうなるのでしょうか。

誤送金の懸念と、翌朝を待つ絶望

しかし、「ご入力された支店コードが存在しないものであれば、振込は不成立となり。後日お客様の口座へ資金は返却されます。しかし、もし誤った支店コードが実在する別の支店のものであった場合。そちらの口座へ振り込まれてしまう可能性がございます」。

最悪のシナリオが、現実味を帯びてきました。もし、誤送金になってしまったら。組戻しという手続きが必要になりますが、それには相手先の同意が必要であり。時間も手数料もかかります。しかも、給与という性質上、遅延は許されません。

デスクで銀行に電話している様子(日本語の書類が机に並んでいる)

「それで、今回のケースがどちらに該当するのか、今すぐ確認できませんか?」

さらに、祈るような気持ちで尋ねましたが、返ってきたのは無慈悲な宣告でした。

「申し訳ございません。振込データは順次処理されるため。個別の案件の状況を確認するにはお時間がかかります。結果が判明するのは、早くとも翌営業日の朝になります」

絶望的でした。今の自分にできることは何もなく、月曜の朝を待つしかありませんでした。電話を切った後、しばらく受話器を握ったまま動けませんでした。オフィスにはもう誰もいません。窓の外は、すでに夕方の暗さに変わっていて、不安だけが残りました。

給与誤送金、経理担当者の地獄の週末

まず、銀行からの「翌朝まで待つしかない」という言葉は、本当に絶望的でした。金曜の夜から月曜の朝まで、実に二日半以上です。この間、自分は生きた心地がしないまま過ごすしかありませんでした。オフィスに残っていてもできることはないと頭では分かっているのに。すぐに帰宅する気にはなれませんでした。

重い足取りで会社を出ました。いつもなら解放感に満ちているはずの金曜の夜が、鉛のように重くのしかかります。満員電車の吊り革に掴まりながら。頭の中では最悪の事態が何度もシミュレーションされていました。誤送金になっていたら。相手が返金に応じてくれなかったら。会社に損害を与えてしまいます。何より、給与が振り込まれない従業員にどう説明すればいいのでしょうか。上司への報告、始末書、そして信用の失墜。考えれば考えるほど、胃がキリキリと痛みました。

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振込ミスの悪夢、不安な週末と対策

その夜はほとんど眠れませんでした。ベッドに入っても目が冴えてしまい。何度もスマホで「振込ミス 組戻し 手続き」「給与振込 遅延 責任」を検索していました。午前3時ごろに少し眠れたと思ったら、エラー画面の夢で目が覚めてしまいました。

次に、土曜日も日曜日も、何をしていても落ち着きませんでした。家族と話していても上の空で、時計ばかり見ていました。自分の1つのミスでここまで不安になるとは思っていませんでした。経理の仕事の重さを、身にしみて感じた週末でした。

土曜の午前は、念のため振込データの元ファイルをもう一度開いて。どこで入力を誤ったのかを紙に書き出しました。作業手順を最初から追っていくと、振込先の追加があった日の行だけ。いつもと違う貼り付け方をしていたことに気づいた状態でした。日曜は、次回同じ事故を起こさないためのチェック表を手書きで作りました。「支店名はマスタから貼る」「支店コードは手入力しない」「送信前に差分チェックを保存する」という3項目です。大げさな仕組みではありませんが、書いてみると頭が少し整理されて。不安が少しだけ軽くなりました。

振り込みミスの顛末

月曜日の朝。始業時間よりも1時間早く出社しました。誰もいないオフィスでパソコンの電源を入れ。震える指でネットバンキングのサイトにログインします。心臓の鼓動が耳元で聞こえるようでした。取引履歴のページを開き、問題の振込データのステータスを確認します。そこには、「手続完了」の4文字がありました。

一方で、一瞬、全身の力が抜けました。よかった。振り込まれています。しかし、次の瞬間、新たな不安が頭をもたげました。「手続完了」は、あくまで銀行側の処理が終わったことを示すだけです。誤った支店コードが実在する別の支店のもので。そちらに「完了」している可能性は捨てきれません。本当の意味で安心することは、まだできませんでした。

午前9時過ぎ、銀行の担当者から電話がかかってきました。固唾を飲んで、その言葉を待ちます。

「お問い合わせの件ですが、確認いたしましたところ。ご入力いただいた支店コード『124』は当行に存在しないコードでございました。そのため、システム側でエラーを検知し。口座名義等の情報から正しい支店『123』を特定して処理いたしました。無事、正規の口座へ振り込まれております」

誤入力ヒヤリハットと再発防止

そのため、その説明を聞いて、正直ほっとしたのを覚えています。もし「124」が実在する支店コードだったら、事態はまったく違っていたはずです。今回は不幸中の幸いです。入力ミスが、たまたま存在しないコードだったことに助けられただけでした。

振込完了通知を確認してほっとしている様子(パソコン画面に日本語の完了メッセージ)

安堵と同時に、自分の運の良さに怖さも感じました。今回は助かりましたが、次も同じとは限りません。ヒューマンエラーはまた起きる可能性が高いと思っています。その時に運だけを頼る状態では、また同じ不安を抱えることになります。今回の冷や汗では済まない事態、つまり誤送金からの組戻し手続きや。最悪の場合は資金を回収できないリスクを想像すると、心の底から震えました。今回はたまたま助かっただけでした。もう二度と同じ思いをしたくないので。今回の経験を「ヒヤリ・ハット」で終わらせないと決めました。

VLOOKUPで入力ミス防止

あの地獄のような週末を二度と繰り返さないために。まず「気をつける」だけでは足りないと思っています。そこで、ミスが起こりにくい流れをExcelで作ることにしました。最も身近なツールがExcelだったからです。プログラミングの知識はありませんでしたが。Excelの関数なら非エンジニアの自分でも試せると思いました。

しかし、目を付けたのは、VLOOKUP関数でした。支店名を入れたら支店コードを自動で出す形にできれば。手入力ミスをかなり減らせると思ったからです。専門的なことは分かりませんでしたが、これなら自分でも進められると考えました。

自社で使う銀行の支店名と支店コードを一覧にして、「支店マスタ」シートを作りました。振込データ入力シートでは、支店コードのセルに `=VLOOKUP(B2, 支店マスタ!A:B, 2, FALSE)` を入れる形にしています。支店名を入れるとコードが自動で返るので、手で3桁を打つ作業はほぼ不要です。

地道なマスタ整備、業務効率化の成果

最初はこのマスタ作りでも何度かつまずきました。銀行サイトの表をコピーすると、全角スペースが混ざって一致しない行が出たり、支店名に「支店」が付く表記と付かない表記が混在していたりします。VLOOKUPが `#N/A` になった行を1件ずつ確認して、余計な空白を `TRIM` で削る、表記を統一する、といった地味な修正を重ねています。この作業は正直かなり面倒でしたが、ここを雑にすると本番でまた焦ると分かっていたので、時間をかけて整える形にしました。

ExcelでVLOOKUPを使った支店コード自動補完の設定画面

さらに、この仕組みを導入したことで、振込データの作成プロセスはかなり変わりました。担当者は支店名を入力(あるいはコピー&ペースト)するだけです。支店コードは自動で表示されるため、手入力の打ち間違いは大幅に減っています。

体感だけで終わらせないように、100件あたりの作業時間も記録しました。導入前は入力と確認で約90分かかっていましたが。導入後は約35分まで短縮できています。約55分の削減となり、月末の残業時間もかなり減りました。

もちろん、マスタデータ自体のメンテナンスは必要になりますが、一度作ってしまえば。日々の業務の安全性と効率は上がっています。たった一つの関数でも、あの悪夢のようなミスを減らす助けになりました。

ミスは仕組みで防ぐ!VLOOKUPがもたらす安心

まず、今回の支店コード1桁間違いで、自分の考え方はかなり変わりました。注意力だけでミスをゼロにするのは難しいです。忙しい日や疲れている日は、どうしても判断が鈍ります。だから「気合いで防ぐ」より、先に仕組みを作る方が現実的です。

「もっと集中しよう」だけでは再発を止められませんでした。自分の中では、手入力させない仕組みに切り替える方がはるかに効果があります。万一ミスが出ても早めに気づける流れを作るだけで。精神的な負担はかなり下がりました。

VLOOKUPを入れた翌月の振込日は、作業中の気持ちがまったく違いました。以前は「またどこか間違えているかもしれない」と不安でしたが。その不安はかなり薄れています。送信ボタンを押すときの手の震えがなくなったのが一番大きな変化です。

次に、今回、自分を助けてくれたのはExcelのVLOOKUP関数でした。PythonやRPAのような大きい仕組みではなくても。目の前の事故を防ぐには十分です。自分が今使える道具で、まず事故を減らす形にするのが一番現実的だと思っています。

失敗から学ぶExcel業務改善

この一件以来、日常業務の中でミスが出やすい箇所を意識して見るようになりました。手作業の転記、目視での確認、同じ入力の繰り返しは。事故のきっかけになりやすいと感じています。そうした部分の多くは、Excelの関数やマクロでかなり減らせています。あの眠れない夜が、そのことを強く教えてくれました。

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