ChatGPTに業務自動化を相談するたびにPythonを勧められるが、会社のPCには展開できなかった話|現場で使える技術を自分で選ぶための判断基準

ChatGPTに「業務を自動化したい」と相談した回数は、もう覚えていないほどです。でも確実に言えることは――毎回、本当に毎回Pythonを勧められました。10回以上、いや20回以上かもしれません。

「こういう作業を自動化したいんです」と説明します。すると、ChatGPTの答えはほぼ決まっていました。「それはPythonで実装できます」「Pythonを使えば簡単に自動化できます」「Pythonで〇〇というライブラリを使えば……」

まず、一度や二度なら「そういうものか」と受け流せたかもしれません。だけど10回、20回と繰り返されると、さすがに疑問が浮かびました。ChatGPTはなぜそんなにPythonを推すのか。本当にPythonが最適な選択肢なのか、と。

最終的には、Pythonで実装することになりました。でもそこに至るまでは、現実の壁の連続でした。ChatGPTの提案を、そのまま受け入れるわけにはいかなかったのです。

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Pythonが選ばれる理由

Pythonが毎回推薦される理由は、Pythonそのものの特性にあると考えられます。汎用性が高く、データ処理・ファイル操作・Web連携のどれも得意だからです。ライブラリも豊富です。さらに、業務自動化のコード例がネット上に大量にあるのも理由でしょう。

AIは学習データから最適度が高い答えを返します。だから「業務自動化」と聞けば、学習データに最も多いパターンを返します。それが、Pythonを使った実装例なのだと思います。AIに悪意はありません。ただ、AIが参照しているのは「一般的な環境」を前提にしたデータに過ぎないのです。

現場を阻むITセキュリティの壁

セキュリティポリシーが厳しい会社が、どんな制限をかけているか。同僚たちが、新しいツールにどんな抵抗感を持つか。そういった「現場固有の制約」は、学習データには含まれていません。だからAIは今日も「Pythonを使えば」と答え続けるのでしょう。

会社のPCでのインストール制限画面

一方で、Pythonを勧められて、最初にぶつかった壁は非常に明確でした。IT部門に「Pythonをインストールしたいです」と申請したのです。

返ってきた答えは「出来ません」というものでした。

理由を聞くと「セキュリティポリシー上、スクリプト言語の一括インストール環境での稼働は禁止」とのことでした。つまり、社内PCのどのマシンにも、Python本体を入れる権限がなかったのです。

悩んでいたのは、私だけではありませんでした。他の同僚たちも、各自のタスク自動化に悩んでいました。IT部門の制限は厳格です。「個別申請は可」という抜け道もありましたが、承認には数週間かかります。それを待つ余裕はありませんでした。

Pythonなし、非エンジニアの選択肢

だから次に考えたのが「ならばPython以外で」という選択肢でした。

Webアプリ(HTMLとJavaScript)、GAS(Google Apps Script)、VBA。そしてEXE化(PyInstaller)など、実装方法はいくつか考えられました。ChatGPTは「Python」を推します。しかし、私が直面しているのは「Pythonを使えない環境」という制約です。その中で、本当に機能する選択肢は何かを見極める必要がありました。

ChatGPTにPythonを勧められても、会社のセキュリティポリシーが壁になります。それでも業務効率化を諦める必要はありません。Pythonが使えない環境でも、選択肢はいくつか存在します。非エンジニアの総務・経理・人事担当者が、実際に「手を出せる」ものです。

Webアプリ・GASによる業務自動化の魅力と注意点

まず挙げられるのが、Webアプリ(HTMLとJavaScript)やGAS(Google Apps Script)です。これらはWebブラウザ上で動作します。そのため、PCへの特別なソフトウェアインストールが不要です。これは大きな利点です。会社のIT部門がスクリプト言語のインストールを制限していても、問題ありません。ブラウザさえ使えれば、動かせる可能性が高いからです。

特にGASは、すでに環境が整っている企業がほとんどでしょう。Google Workspaceを導入していれば、そのまま使えます。GoogleスプレッドシートやGmail、Googleドライブと連携できます。データの集計やメール送信、ファイル整理も、驚くほど簡単に自動化できます。GASはJavaScriptをベースにしています。そのため、Webアプリ開発の経験がある方なら学習コストも低めです。一方で、Googleサービスへの依存度が高まる点には注意が必要です。外部サービスとの連携では、APIキーの管理にも気を配りましょう。

VBAの可能性と限界

次にVBA(Visual Basic for Applications)は、Office製品に特化した自動化ツールです。多くの企業で、ExcelやAccess、Outlookが日常的に使われています。そのため、VBAは非常に身近な存在と言えます。既存のOfficeファイルに、マクロとして組み込みます。したがって、新たなソフトウェアのインストールは一切不要です。

Office内での定型業務なら、VBAは強力な武器になります。例えば、Excelでの複雑なデータ処理やAccessでのデータベース操作です。Outlookでのメール仕分けにも使えます。長年の歴史があるため、学習リソースも豊富です。しかし、VBAは基本的にOffice製品の枠内でしか動作しません。Web上のデータ取得やクラウドサービスとの連携は苦手とする場面が多いのです。

また、マクロを含むファイルの共有方法によっては、セキュリティ警告が表示されます。情報システム部門から、一時的に利用を止められる可能性も考慮すべきです。

Microsoft主力企業にPower Automate

さらに、Microsoft製品を主力とする企業であれば、Power Automateも有力な選択肢です。これはMicrosoftが提供するノーコード・ローコードの自動化プラットフォームです。OutlookやSharePoint、TeamsといったMicrosoft 365サービスとの連携が非常に強力で、クラウドフローとして自動化を実現できます。

PCにインストールするPower Automate Desktopもあります。これを使えば、Webサイトやデスクトップアプリの操作まで自動化できます。Power Automateの魅力は、直感的に操作できる点です。「トリガー」と「アクション」を組み合わせるだけで、自動化フローを構築できます。プログラミングの知識がなくても、視覚的に自動化のシナリオを組み立てられます。そのため、非エンジニアには非常に扱いやすいツールと言えるでしょう。ただし、機能に応じたライセンス費用が発生する場合があります。組織的な導入には、情報システム部門との密な連携が不可欠です。

実際には、Pythonで実装することになった。最終的にはに関する解説図(日本語UI)

Python EXE化の困難、現実的選択

PyInstallerなら、PythonのコードをEXEにできます。しかし、この方法はセキュリティポリシーの壁にぶつかりやすいのです。EXEファイルは実行可能ファイルであり、社内PCでの実行には厳格なチェックが行われるからです。ウイルス対策ソフトの誤検知や、承認されていないソフトウェアの実行禁止もあります。そうした制限により、結局は利用できないケースが多いのです。

たとえEXE化しても、IT部門の許可なく使うのは極めてリスクの高い行為です。

結局のところ、Pythonが使えない状況では、別のツールに目を向けるのが現実的です。既存のITインフラ内で動くものや、Webブラウザ経由で使えるものです。どのツールを選ぶかは、会社のIT環境や自動化したい業務の内容で変わります。さらに、情報システム部門の承認基準にも大きく左右されます。

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情シス視点:現場自動化の壁と対話術

現場の担当者がいくら業務の自動化を望んでも、それだけでは実現しません。情報システム(情シス)部門の協力がなければ、極めて難しいものです。彼らは単に「Yes/No」を告げるだけではありません。企業のITインフラ全体を管理し、セキュリティを維持する重要な役割を担っています。彼らがPythonのインストールを拒否するのも、単なる意地悪ではなく、明確な理由と責任に基づいた判断なのです。

現場ツールのリスクと情シス連携

情シス部門の視点で考えてみましょう。現場が「便利だから」と新しいソフトを入れると、どうなるでしょうか。潜在的なセキュリティリスクや、運用コストの増大につながります。例えば、Pythonは一度入れれば様々なライブラリを追加できます。そのため、意図しない形でマルウェアが実行されるリスクがあります。機密情報が流出するおそれもあるのです。

また、特定の社員が個人的に導入したツールが壊れた場合、そのメンテナンス責任は情シス部門に降りかかります。多くの会社で、情シスは限られた人員でITインフラを支えています。申請ごとの対応時間も、その後のサポート体制も確保できないのが実情です。

だからこそ、現場が自動化を進める上で最も重要なのは、情シス部門との建設的な対話です。まず、自動化したい業務が具体的に何なのかを明確に伝えましょう。そのうえで、自動化によってどのような効果が期待できるのかを示します。単に「楽になる」だけでは伝わりません。具体的な数値目標を示しましょう。例えば「月に〇時間の削減が見込める」「エラーが〇%減る」などです。そうすれば、情シス部門も業務改善のメリットを理解しやすくなるはずです。

システム適合と情シス連携

次に、提案する自動化の仕組みが会社にどう適合するかを説明します。セキュリティポリシーや既存のITインフラとの関係です。例えば、Google Workspaceを導入している会社なら、GASが使えます。新たな環境構築が不要な点を、強調するのも良いでしょう。Power Automateであれば、すでにMicrosoft 365のライセンスに含まれている可能性や、情シス部門が統制しやすいプラットフォームであることをアピールします。自分たちで勝手にツールを選定・導入しようとしてはいけません。情シス部門の推奨ツールや導入実績のあるツールを、事前に確認するのも有効です。

ChatGPTに自動化を相談すると、なぜ必ずPythonが出てくるのかに関する解説図(日本語UI)

情シス連携と自動化運用計画

さらに、導入後の運用計画も提示します。誰がその自動化ツールを管理するのか。問題が発生した際の対応フローはどうするのか。こうした点を明確にすれば、情シス部門の懸念を払拭できる場合があります。場合によっては、少人数でのパイロット運用(PoC: Proof of Concept)から始め、その効果と安全性を実証していくことも有効なアプローチです。

情シス部門は、現場の業務を円滑に進めるためのサポート役です。同時に、会社のデジタル資産とセキュリティを守る守護者でもあります。彼らの立場と役割を理解し、一方的に要求しないこと。協力者として、情報共有と合意形成に努めること。これが、Pythonが使えないという壁を乗り越える賢いアプローチだと言えるでしょう。

VBA自動化:Office完結の限界

VBAは、Office製品に特化した自動化ツールです。ExcelやAccessを使っている事務職の方も多いでしょう。一度は「マクロ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。VBAは、これらのOfficeアプリケーション内で動作します。そのため、新たなソフトウェアをインストールする必要がありませんでした。マクロの記録機能を使えば、自分の操作をそのままコードとして保存できます。プログラミング初心者でも、取り組みやすいと感じました。

しかし、VBAにも限界がありました。例えば、Webサービスとの連携には向いていませんでした。会社の外部システムと繋ぐような複雑な処理も苦手でした。私の業務では、社内システムからデータを取得してExcelで加工していました。さらに、その結果をWebフォームに入力する作業もありました。そのため、VBAだけでは全てを自動化することが難しい状況でした。VBAは、あくまでOffice製品の中で完結するのが基本です。そのため、私の業務全体をカバーするには不足していたのです。

EXE化の壁

そこで次に出てきたのが、Pythonで作ったプログラムを「EXEファイル」として変換してしまう方法でした。PyInstallerというツールを使えば、PythonがインストールされていないPCでも、作成したプログラムを単独で実行できるようになります。これならIT部門にPython本体のインストールを申請する必要がなくなるのではないかと、一筋の光明が見えた気がしました。

しかし、このEXEファイルにもまた別の壁がありました。IT部門にEXEファイルの展開を申請したところ、これもまたセキュリティスキャンの対象となり、承認に時間がかかるとのことでした。さらに、プログラムを修正するたびにEXEファイルを再生成し、再度申請し直す手間がかかるため、頻繁な改修が必要な業務自動化には向かないという結論になりました。

セキュリティ上の懸念は、EXEファイルでも解消されなかったのです。

セキュリティポリシーが厳しい会社がどんな制限をかけているかに関する解説図(日本語UI)

制約下の複合自動化戦略

結局、私の場合は複数の方法を組み合わせる形になりました。一部の単純なデータ処理はVBAで、Web連携が必要な部分はGASを使い、そしてどうしてもPythonが必要な部分については、IT部門と交渉を重ねて限定的な環境を構築したり、クラウドサービスを利用したりすることで対応することになったのです。ChatGPTが勧めるPythonは魅力的でしたが、会社の制約の中で試行錯誤する毎日でした。

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